<過激戦隊ラジカル5(ファイブ)!>
 
プロローグ
 
 時は二十一世紀初頭!
 世界は、未曾有の危機、というほどでもないけど、なんかそれっぽいものに直面していた!
 世界征服を企む闇の組織『スケスケ団』が、ついにその全貌を現し、邪悪な活動を開始したのだ!
 スケスケ団。それは、謎の老科学者『総統スケベデス』を首領と仰ぎ、使命遂行のためには死さえ厭(いと)わない団員たちによって構成された恐怖の秘密結社である。
 彼らの最終目的は、世界征服によって世界中の人間を完全に統制し、しかるのち、世界中から集めた美女によってスケベデス専用のハーレムを作り出すこと。なんかセコいんだか壮大なんだか良く分からん最終目的である。
 しかし例え目的がアホらしかろーと組織の名前がヘンだろーと、彼らスケスケ団が強大な力を持った組織であることに変わりはなかった。そのハイパー・テクノロジーによって作り出される強力な怪人には、通常兵器が一切通用しないのだ。まさしく、何とかに刃物ってやつである。
 彼らスケスケ団は、世界征服の手始めに、日本の東京をターゲットとして選んだ。東京都民にとっては、ムチャクチャ迷惑な話であろう。
 都心にどこからともなく現れる異形の怪人たちは、手当たり次第、目に付いた美人を掴まえ、犯しまくる。世界征服を目標に掲げているくせに、やってるコトはタチの悪い変質者と同じである。
 とはいえ状況はそれなりに深刻だった。事態を重く見た日本政府は、やむを得ずスケスケ団に対抗するための特殊チームを編成した。
 チームの名は、『過激戦隊ラジカル5(ファイブ)』
 これは、世界を救うため、命を懸けて戦い続ける五人の戦士たちの、愛と、勇気と、友情、そして感動の物語である。
 
 たぶん。
 
 
第一章 ラジカル5(ファイブ)参上!
 
「あっ・・・っ、あんっ、あんっ、ああ〜ん!」
「やあっん・・・ふ、ふわぁ・・・あぁーっ」
 とある休日の昼下がり。西新宿のメインストリートに、うら若い女性たちの叫声が響き渡った。
 全長三メートル。巨大なタコを思わせる異形の生物が、ウネウネと動く八本の触手を使い、道を歩いていた数人の女の子たちを掴まえ、公衆の面前でなぶり回しているのである。
 女の子たちは、服もスカートも破かれ、下着も引きちぎられて、ほとんど全裸と変わらぬ格好で宙に吊り下げられていた。白い肢体の上を、触手がヌメヌメと這い回る。
 彼女たちは、最初不快なだけだった触手の感触が、徐々にすさまじい快感へと変わっていくのを感じていた。尖った乳首を吸盤で吸われたり、突起した秘芯を触手の尖端でつつかれたりするたびに、「あんっ」と恥ずかしい声がもれてしまう。
 かすかに残っていた羞恥心も、イボの付いた触手で蜜壺の中を掻き回されだすと、あっけなく崩壊してしまった。
「ひぁあんっ・・・あっ・・・ああああぁあ・・・・」
「・・・そこっ・・・くぅううーんっ・・・・・」
 実は、このタコ怪人が体表から分泌している粘液は強力な媚薬で、肌を透し体内に入ることで脳がとろけるほどの快感を女性の体に与えるのである。
 周囲にいるサラリーマン風の男性たちは、恐怖というより、むしろスケベ心から、この光景をただ黙って見つめ続けることしかできない様子だった。まぁ、その気持ちは分かるが。
 一方、タコ怪人の腕にぶら下げられた女の子たちは、体中の性感帯と敏感な秘貝の中を八本の触手にまさぐられ続け、止めどなく喜悦の涙と愛液を流しながら、歓喜の絶頂へと駆け昇っていった。
「ひあぁっ・・・はぁ・・・っ! イク・・・イク・・・」
「やあっ・・・イクッ・・・イッちゃうぅ・・・」
 いよいよクライマックス。周囲の男どもが一斉に息を呑んだ、その瞬間。
 突如、凛とした少女の声が街頭に響きわたった。
「待ちなさいっ!」
「なにぃっ?」
 怒りの声を発したのは、タコ怪人ではなく、周囲の男たちだった。まぁ、その気持ちも分かるが
 タコ怪人から一〇メートルほど離れた歩道橋の上。そこに五人の男女が一列に並び、決めポーズを取っていた。
「それ以上の狼藉は、私たちラジカル5が許さないわっ!」
 パターンなセリフを恥ずかしげも無く言い放ったのは、髪をショートカットにした一人の美少女だった。キツめの眼差しと挑戦的な唇が、気性の激しさを窺(うかが)わせる。
 彼女の名前は緑野(みどりの)ミドリ。空手部に所属する現役の学生で、バリバリの体育会系です、ってな感じの少女だ。
 スレンダーな体つきで胸はないが、ヒップラインの美しさは特筆モノである。ホットパンツからスラリと伸びた太ももがまぶしい。男なら誰でも、この足にむしゃぶり付いて、よっしゃ! と叫んでみたいところだ。(←叫ばない)
「そこのタコさ〜ん。女の人たちを放してくださぁい。でないと、攻撃しちゃいますよぉ」
 続いて、栗色の髪を長く伸ばした美少女が、気の抜けるような降伏勧告を行なった。彼女の名前は桃野 桜(ももの さくら)、一八歳。以前B級のアイドル歌手だったという経歴の持ち主だ。
 ミドリが体育会系の美少女なら、桜は文化系の美少女という印象だった。どこかおっとりした感じを与えるつぶらな瞳に、やや太めの眉毛がチャームポイントである。
 体つきは小柄で細身だが、出るところは充分に出て、引っ込むところは引っ込んでいる。有り体に言えば、おっぱいがデカい。少なく見積もってもGカップはあるだろう。しかも形がいい。男なら誰でも、この胸に顔をうずめて、おおぅ、と唸ってみたいところだ。(←唸らない)
 このすこぶるつきの美少女たちの他に、三人の男がいる。紹介しておこう。一応。
 まず、真ん中で偉そうにつっ立っているのが、戦隊のリーダーで、元お笑い芸人というワケの分からん経歴を持つ、赤野 紅一郎(あかの こういちろう)。二五歳。眉毛が太く、髪の毛があっちこっちに飛びはねている。少年漫画の主人公みたいなタイプだ。
 続いて、彼の右隣にいるのが、一応、副リーダーで、元郵便局員の、青野 青児(あおの せいじ)。二四歳。髪を七・三に分けた、やせぎすの男である。
 そして三人目の男が、黄野 金造(きの きんぞう)、二一歳。肉付きが良くガッチリした体格、ってゆーか、すごいデブ以前は相撲取りでした、とか言われると納得してしまいそうだが、実は元アニメーターだ。もっとも、それはそれで納得はいく
 しかしどうでもいいが、お笑い芸人とかアニメーターとか、一体何を基準にして選ばれたのか良く分からん集団である。なんとか役に立ちそうなのは空手部員の女の子くらいだ。非常識な話であるが、彼らの敵も充分に非常識であるので、釣り合いだけはとれている
     *
 さて、ラジカル5の五人が、タコ怪人へ決めポーズを充分に見せ終わると、それを待っていたかのように、というか待ってたんだけど、漆黒のボンテージ・スーツに身を包んだ一人の美女が、突然タコ怪人の背後から姿を現した。
「良く来たな、ラジカル5(ファイブ)よっ! 今日こそ、貴様らの息の根を止めてやる! このスケスケ団女幹部、ローズ将軍さまがなぁ!」

 彼女は、自分でも名乗ってるけど、スケスケ団の女幹部、ローズ将軍さまである。頭にサークレットを付け、肌に複雑な紋様をペイントしているところが、そこはかとなく悪の女幹部っぽい
 褐色の肌と、ツンと上を向いた鼻先が生意気そうな印象を与えるハデめの美人だ。年の頃は二〇代の前半くらい、なかなかのプロポーションの持ち主で、黒革のビキニに包まれたたわわな果実は、Eカップはあるだろう。
 彼女は、周囲の視線を意識して軽くポーズを決めると、大声で叫んだ。
「いでよ、戦闘員どもっ! やつらをひねりつぶせ!」
「キーッ」
 ローズ将軍の命を受け、どこからともなく現れた総勢三〇名ほどの、黒い全身タイツに身を包んだ男たちが、一斉にラジカル5へ襲い掛かってきた。しかし。
「ハリセン・クラーッシュ!」
「ハガキ・カッター!」
「インク・ボンバー!」
「ソニック・ブラスト!」
「ナックル・ブレイク!」
 ラジカル5の必殺技がいきなり火を噴いた。戦闘員たちは一瞬でボロ雑巾のようになって地面に叩き伏せられる。意外に強いぞ、ラジカル5(ファイブ)。
「ふ、ふふ・・・なかなかやるではないかラジカル5・・・そうでなくては面白くない」
 ローズ将軍は、口元を引きつらせながら、ちょっと強がりを言った。悪役もけっこー大変である。彼女は、半分涙目になりながら大声でタコ怪人に命令を下す。
「行けっ、怪人『タコ男』よ! 下っぱとは違うところを見せてやれっ!」
「タコタコ!」
 怪人タコ男は、そのまんまな鳴き声を上げると、ラジカル5に突進していった。
「ハリセン・クラーッシュ!」「ハガキ・カッター!」「インク・ボンバー!」「ソニック・ブラスト!」「ナックル・ブレイク!」
 一瞬でボロ雑巾のようになって地面へ叩き伏せられる。なんか異様に弱いぞ、タコ男。
 ローズさまは、頭痛をこらえるよーに眉根を押し揉みながら叫んだ。
「ええい、しっかりせんか、タコ男っ! 根性を見せてみろ、根性を!」(←無茶言うな)
「タ・・・・タコタコ!」
 しかしタコ男は、必死で立ち上がると、とがった口をラジカル5に向けて突きだした。
 ブシューッ! 
 突然、鋭い呼気音と共に、タコ男の口から黒いガスが吐き出される。
「いかん! 毒ガスかっ?」
 ラジカル5のメンバーは煙に巻き込まれて、一瞬ガスを吸い込んでしまった。・・・が、別に何ともない。
 やがて煙は晴れて、何事もなく元の状態に戻った。
「・・・何だったんだ、今の?」
 リーダー、紅一郎のつぶやきに、青児が自信なさげに答えた。
「ひょっとして・・・・・・・逃げたんじゃないですかね
 ハッ。
 一同が気付いた時にはすでに遅く、怪人タコ男は、跡形もなく消え失せた後だった。この場に立っているのは、ラジカル5のメンバー三人だけである。
「・・・・・・・・・・・三人?
 人数の足りないことに気付いた彼らは、慌てて周囲を見回した。確認するまでもなく、ミドリと桜がいない。どうやら、タコ男がどさくさにまぎれて連れ去って行っちゃったらしい。
「・・・見事な手際だ」
 一同は思わず感心した。(←感心してる場合か)
     *
「さて、これからどーしよう?」
 リーダーの紅一郎が、あまり緊迫感のない口調で、残った二人のメンバーに意見を求めた。すかさず金造が、手を挙げて発言する。
「はい。こちらも敵の人質を取って、捕虜の交換を申し出たらどうっすかね?」
「おっ。いい考えじゃないか」
 紅一郎はポンと手を打った。どーでもいいが正義の味方の考えるコトではない。
「しかし、敵の人質ってのはどうやって手に入れる?」
 紅一郎の問い掛けに、青児が足元を指差して答えた。
「それなら、すぐ手に入ります」
 足元には、なぜか都合よくローズ将軍が意識を失い、イイ感じでぶっ倒れていた。
 三人の男は顔を見合わせる。
「煙に巻かれたときにスッ転んで、頭を打ったらしいな」
 紅一郎が、ローズの後頭部にあるタンコブを見て無表情に分析した。